第7幕 在宅介護 コラム ~認知星人じーじ~
わが家のじーじ(父)は、アルツハイマー星に住む認知星人。
じーじは認知星人に変身する前には必ず決まってあるポーズをする。
握りこぶしを顎に当て(おでこの時もある)、数分間微動だにしない。
そして、このポーズをしたあとは必ずびっくりスペシャルな発言をする。
どうも、認知星と交信しているらしい。
今回の発言は「この間、東急建設に家を売った。担当者ともう一度話をするから、
今から支度をして東急建設に行く」。
わが家は、築40年。かなり年期が入っているが、じーじがちょこちょこ手入れを
してくれていたおかげでまだまだ現役。そんなことより、家を売っただとお!
私「え~!家売ったの?」
じーじ「そうだ、今年から固定資産税の税率が上がったから、この家の固定資産税は3,000万円になったんだ」
私「さ!さんぜんまんえん?」
じーじ「そうだ、お前はそんなことも知らなかったのか」
私の心の声「固定資産税が3,000万円だなんて、どんだけでっかい家だよ」
じーじ「東急建設に出掛けるぞ」
私「え~!今日は東急建設休みだよ」
じーじ「いや、そんなことはない、電話してたしかめろ!」
・・・電話するふり・・・
私「もう、営業時間外だって」
じーじ「困った、この間乗っ取り屋がきて、この家を乗っ取ろうとしている奴がいるから、売ったんだ」
私の心の声「へ?乗っ取り屋?固定資産税が3,000万円だから売ったんじゃなかったの?かい?」
私「乗っ取り屋が来たの?」
じーじ「この間、来ただろう、タオル持ってきた小太りの若造が、あいつだ」
…ひらめいた!
わが家の西側に、建売住宅が建つことになり、大手の住宅メーカーの方が挨拶に来てた。それだ!そういえば、じーじは私の隣で、何千万円の家ですか?って聞いてた。その額3,000万円。住宅メーカーは乗っ取り屋に、建売住宅の販売価格3,000万円は、わが家の固定資産税になった訳か。
私「まあ、今日のところは、東急建設はお休みだし、夕飯食べて、ビール飲もうか」との問いかけに、「しょうがない、ビール飲んでやるか」とニコニコしながらビールを飲んで今日のところは一件落着。今日も楽しく認知症介護実践中。
黒川 玲子