第16幕 在宅介護 コラム ~認知星人じーじ~
わが家のじーじは、アルツハイマー星に住む認知星人。昭和3年生まれの満州育ち。認知星人のスイッチが入ると、一つの事に固執する。今回の固執は「鱒寿し」。
几帳面なじーじは毎日日記をつけている。といっても、何時何分「大」、何時何分「小」とトイレに行った時間が記入してあるだけだが(笑)。
そして何故か毎朝、新聞をホチキスで止めて、日付を赤で囲むのが日課。ここ数週間、日記帳にも新聞にも「鱒寿し」の文字。
私「鱒寿し、食べたいの?買ってこようか?」
じーじ「いや、俺が食べるんじゃない」
よくよく話を聞いてみると、どうやら、誰かが送ってくれることになっているらしいが・・・。
次の日、私宛の宅急便を見て
じーじ「鱒寿しが来たな!満鉄に送ってくれ!」
私:「これは、鱒寿しじゃないよ」
じーじ「明日、届くから、満鉄に送ってくれ」
私の心の声「ま!満鉄?」
何で満鉄?なんて聞こうものなら、認知星の怒りん坊星人に変身してしまうので、ここはひとまず「わかったよ!」と返事をしたものの、本当に鱒寿しが届いたらどうしょう・・・そこで思い切って聞いてみた。
私「鱒寿しさあ、満鉄の誰宛てに送るの?」
じーじ「誰宛て?そんなもん、差出人の俺の名前を見れば、しかるべき人に届くように手配してあるから、そんな細かいことを心配するな。それより、鱒寿しがこないことの方が問題だ。約束を破ると、国際問題に発展するからな」
な!なんと、鱒寿しを送らないと国際問題に発展するらしい、そりゃ~大ごとだ。
それから毎日、普段まったく気にしない(というか、耳が遠いので聞こえていない)玄関のチャイムの音に異常に反応し、「鱒寿しか、満鉄に送れ」を連発。鱒寿しでないことが解ると、「早く送らないと、本当に大変なことが起るぞ」とご機嫌ナナメになる始末。
そして数日後、ついに鱒寿しがわが家に届いてしまった。さあ、どうやって満鉄に送ったことにするか思い悩むが…
私「鱒寿しきたよ」
じーじ:「きたか!食うぞ!」食べる気満々。
…満鉄に送るんじゃなかったんかい!
【プロフィール入るかな? 訂正をお願いします。埼玉県内の福祉事業所勤務になっていますが、勤務してません(笑)】