第10幕 在宅介護 コラム ~認知星人じーじ~
わが家のじーじは、アルツハイマー星に住む認知星人。
認知星人のスイッチが入ると、私に数々の難題を突き付ける。
私にとっては困りごとの一つだが、認知星人にとってはいたって真面目な
問題なのである。
以前、固定資産税が3千万円になったとか、家を乗っ取られるからという訳のわからん
(私にとっては)理由で家を売ったぞ事件があったが、最近は言わなくなっていたので
安心していたが!また、「家を売った」の記憶が再燃したから大騒ぎ(実際は売ってない)。
じーじ「そういえば、家を売った〇〇建設から何か連絡はあったか?」
私「ないよ」
じーじ「○○建設に電話しろ」
しかたがないので 、いつもの電話をかけふりをしてみて、担当者が不在で今日は解らな
いと言ってみたものの、今回はどうにもこうにも治まらない。おまけに、パジャマの上
から上着を着て「俺が直談判をしに行く」と言い出す始末。もうどうにもならないの
で、奥の手の安定剤替わりのビールを献上しこの場は治めたものの、明日の朝が怖い!
案の定、翌朝起きてくるなり「今日○○建設に電話しておけ」の一言。短期記憶が失わ
れるのが認知症の症状のはずだが、じーじは思い込んだら命がけなので、納得するまで
忘れない。とにかく、家を売ってはいないということを納得してもらわないことには毎
日この騒動が繰替えされたらこっちの身が持たない。
・・・ひらめいた。
じーじは、外ズラ良男君なので、家族以外の言うことは実によく聞く。そこで、にせの
担当者を仕立てて説明してもらおう!不動産の知識があって、じーじが好きそうなこぎ
れいな営業マン。いた!Hさんだ。そこでHさんに事情を説明し、にせの名刺をパソコ
ンで作成し準備万態。翌日「○○建設の人が日曜日に説明に来てくれるって」と言った
ところ。
じーじ「何を言ってるんだ、〇〇建設?なんで家に来るんだ?俺にはさっぱり解らん
ぞ、お前は変なこと言うなあ」。
ひえ~~。恐るべし認知星人、せっかくニセ営業マンやニセ名刺まで仕込んだのに。こ
こ数日の騒ぎをすっかり忘れているのであった。まあ、忘れてくれて何よりなので、め
でたし、めでたし。